ジョン・カーターのライヴァルたち


火星の無法者
宇宙アクション
O・A・クライン
井上一夫=訳


Cover Art by 加納光於

久保書店/QTブックス/SF/訳:井上一夫/絵:加納光於/解説:井上一夫/1967.07.01/P230/\270

 驚いたことに、彼女は両腕を彼の首にかけて──あたたかい唇を彼の唇に押しつけてきた。
 ニシャは息をはずませて、長椅子に仰向けに倒れる。そこで彼女は、地球人にまっすぐにとびかかった。
 金切り声で悪態を吐き、彼の胸をたたきむき出しの肌を、血が吹き出すまでひっかく。
 怒りの発作は、はじまったときと同じ唐突さでおわった。恐怖の色を目に浮かべて彼女は力なく彼のわきに立っていた。
 「デザ神様、お助けを! わたしは何てことをしてしまったのだろう」
 彼女はうめくようにいった。
 「女公殿下、退散してもよろしゅうございますか」
 彼は努力した静かな調子でたずねた。
 「いえ、待って、このまま帰っては……」

『火星の無法者』は、オーティス・アデルバート・クラインによる、エドガー・ライス・バローズによって開拓された惑星ロマンスサブジャンルのSF小説である。
まず『アルゴシー』誌1933年11月号から7回に分けて連載された。
1961年にアヴァロン・ブックスからハードカバーで初めて単行本として出版され、同年、エース・ブックスからペーパーバック版が発売された。その後、2007年11月にパルプビル・プレスから、2009年5月にパイゾ・パブリッシングからトレードペーパーバック版が出版された。
この小説はクラインの前作『火星の剣士』の半続編であり、舞台設定が同じで、共通の登場人物も何人か登場する。

The Outlaws of Mars (1933)

comment/コメント

バローズの贋作で有名なクラインの、火星を舞台にした作品。バローズがヒットしていなかったら訳されてはいなかっただろうということは、訳者解説を読んでみるとわかる。
面白いのは、同作が『火星の黄金仮面』とタイトルを変え、武部本一郎画伯の絵も得て創元推理文庫に再録されたときの、同じく訳者あとがきでは打って変わって好意的な解説になっていたこと。
かつては東京創元社はバローズを筆頭にスペースオペラで一山あてていたわけで、まあそういう大人の事情があったのかなと勘ぐってしまう。

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