染色体とは】
染色体は体を形づくるすべての細胞に存在します。染色体は、人の顔形、血液型、性格、
特殊な病気などを伝える多くの遺伝子が連続してひも状になったものですが、細胞分裂
のときは収縮し、一定の数と形になります。染色体は人では46本になり、2本1組の対を
なしています。このうち22対(44本)は常染色体と呼ばれ、男女に共通ですが、残りの
一対は性染色体で男性はXY、女性はXXです。
個体は母体で精子と卵子が合体(受精)したときにはじまります。精子と卵子は、それぞれ
23本の染色体構成で、卵子はX染色体を一つ、精子はXかYかどちらか一つをもつ二種類
になり、どちらかの精子が受精するかによって性別が決まります。
子供は、以上のように父と母から同じ数の染色体を受け継ぎ、両方の形質を兼ね備えた
個体として誕生します。
【染色体異常のおこり方】
染色体の数や構造が異常になることで、その結果、遺伝子が過剰になったり、不足したり
するためにさまざまな障害が現れます。
数の異常は生殖細胞をつくる細胞分裂(減数分裂)のときに突然変異が生じ24本と22本
など、異常な染色体数の卵子や精子ができる現象です。1本過剰の場合をトリソミー、
不足する事をモノソミーといいます。
突然変異は妊娠の5パーセントくらいの高い頻度におこりますが、(遺伝ではありません)
おおかたは流産となり、新生児では150人に1人の割合で異常が発生します。
構造異常は、染色体が切れたり、断片が他の染色体部位に付着したりしておこる形態の
異常で、転座、逆井などと呼ばれています。その結果染色体の部分過剰がおこり、遺伝
物質の過剰や不足の状態にあるときは、知的障害や内臓の奇型を伴います。
しかし、染色体部分の位置の交換だけにとどまる均衡型の転座や逆井は、通常、表現型
に異常なく、健康な状態を保っています。
【染色体異常による病気】
数の異常では性染色体(XXX,XXY、XYYおよびXなど)と常染色体21トリソミー(ダウン症)
の頻度が高く次いで18トリソミー、13トリソミー、まれに8トリソミーが生まれています。
構造異常は染色体の末端部におこりやすく、代表的なものに5番短腕欠失があるほか、
4番短腕、9番短腕、18番短腕や長腕の欠失も特徴的な病気として知られています。
【18トリソミー】
21トリソミーに次いで多い染色体の数的異常症で、5000人に1人の頻度で出生します。
しかし、合併する心臓や腎臓や中枢神経系の奇形が重篤なため重度の発達遅延を伴い、
1歳までにその90パーセントが死亡してしまいます。
18トリソミーは女子が多く、出生時に頭蓋変形や独特の手指の屈曲など特異的な外形
奇形がみられます。
〜家庭医学書より〜
     
      
【臨床症状・病理学的所見】
症例により臨床症状に差異が認められるが、胎生期および出生後の成長障害と精神運動
発達遅延は必発症状である。
出生時体重は在胎週数が正常であっても低体重(SFD)である。わが国で報告されている
50例について集計すると、平均在胎期間は40.7週であるにもかかわらず、平均出生時
体重は2,102gである。外表および内臓の奇形は多種多様である。
(a)頭部、顔面
  長頭でとくに後頭部が突出している。頭囲は正常よりやや小であるが、著名な小頭症は
  まれである。眼の奇形および異常は13トリソミー症候群と比較し軽度であるが、両眼隔離
  (hypertelorism)は高頻度にみられる。内眼角贅皮、眼瞼下垂、眼振、角膜混濁、小眼裂
  小眼球および白内障は低頻度にみられ、虹彩欠損、緑内障はまれである。
  耳介の変形と下方付着および小顎症は50%以上に認められるが、兎唇、口蓋裂は比較的
  に低頻度で10〜20%に認められる。小口症、高口蓋は20〜40%にみられる。
  頸部はダウン症と同様に短く、項部皮膚の過剰が認めれれる。
(b)胸部および腹部
  胸郭は発育不良で短小胸骨が約50%にみられ、骨盤も狭小である。臍ヘルニアおよび
  直腹筋開離が約40%に認められる。先天性心疾患がほとんどすべての症例で認められ
  多くの症例で一つ以上の奇形がみられる。心室中隔欠損が最も高頻度で70〜80%に
  みられ、ついで動脈管開存が約50%に、肺動脈弁あるいは大動脈弁などの弁の異常と
  卵円孔開存が約30%にみられる。
  生殖尿路系の奇形は心血管系奇形についで頻度が高く、約60%に認められる。そのうち
  馬蹄腎が約25%を占める。そのほか重複尿管、水腎症などが認められる。
  男子では停留睾丸が高頻度で約80%に認められる。消化器系の奇形憩室、異所性膵、
  腸管回転異常などが15〜30%に認められる。
(c)四肢
  指の屈曲拘縮と指の重なりあい(第2指が第3指へ、第5指が第4指へ)が特徴的所見で
  90%以上にみられる。足では短小な背屈した母趾および後方に突出した踵と凸面をした
  足底が特徴的である。また股関節開閉制限、第2趾と第3趾との不完全合趾、内反尖足
  も高頻度に認められる。
  四肢の筋緊張度は新生児早期には低下しているが、以後しだいに亢進状態を呈してくる。
  皮膚紋理異常も高頻度にみられ、指紋では6指以上の弓状紋と母指の橈骨側蹄状紋、
  および第5指の単一屈曲線、指の弓状紋の優位が特徴的である。
(d)中枢神経系
  小脳形成不全、脳梁形成不全、水頭症、髄膜瘤、などの種々な
奇形が認められているが
  病理学的には、13トリソミー症候群と比較して、18トリソミー症候群に特異的、恒常的な
  所見は認められていない。
【予後】
流産死の頻度が高く、また出生しても早期に死亡する。男児は女児と比較して、早期に死亡
する。わが国で報告されている症例のうち、生存日数が記載されている45例について
生存率を検討すると、生後1週間で75.6%であり、生後1ヶ月で53.3%、2ヶ月で42.2%
で諸外国における報告と同様に、生後2ヶ月までに50%が死亡し、生後1年での生存率は
13.3%である。

      

18トリソミー症候群で症例の50%以上に認められた主要症状

頭部、顔面および頸部
  ・後頭部突出
  ・小顎症
  ・耳介低位付着および変形
  ・両眼隔離
  ・短 頸
四股
  ・筋緊張亢進
  ・手指の屈曲異常
  ・手指の重合 overlapping fingers
  ・指紋:6指以上の弓状紋
  ・短く、背屈した第1趾
   凸状の足底 rocker-bottom feet
  ・足踵後方突出
  ・股関節開閉制限


胸部および腹部
  ・心雑音
  ・先天性心疾患(VSD、PDA)
  ・短小胸骨
  ・停留睾丸

〜病院の資料より〜