エッセイ Essey for ERB's world


Tarzan : The Epic Adventure を観よ!

written by Hide

21 Oct.1998


 いささか旧聞に属する話をする。バローズ自身が過去の人じゃん、とかいったつっこみはなし。本来ならばリアルタイムに語られるべき話を、それでも我慢できずに書いてみたいということだ。
 バローズは確かに半世紀近くも前になくなった作家だが、それでもいまだに忘れられずにこんなウェブ・サイトを作ったりするようなファンが(世界には)多くいる理由の最大のものは、彼が創造した希代の英雄ターザンの存在を忘れることはできない。日本ではむしろ『火星のプリンセス』に代表されるSFファンタジーの作家として紹介され、記憶されているが、そうはいってもターザンの知名度には及ぶべくもない。それが、バローズの作品として認識されているわけではないとしても。
 そう、ターザンが有名なのは、主に映画のヒーローとしての人気であって、小説のそれではなかった。最近はヒーローというと未来の大都会や宇宙に活躍の舞台を広げ、メカニックを扱うのが当たり前になってしまって影は薄くなってはいるが、それでもまだまだ知名度の点で比較しうるのはスーパーマンくらいのものだろう。まさにアメリカを代表するヒーローなのだ。
 新作も、作られ続けている。10数年前に日本でも公開された『グレイストーク ターザンの伝説』は従来のターザン映画の定石を破りすぎていて、そのくせ新味もだせず、かつテーマの掘り下げも浅くてイマイチだったが、今年(1998年)は『スターシップ・トゥルーパーズ』のキャスパー・ヴァン・ディーンをターザンに、『ラ・マン 愛人』のジェーン・マーチをジェーンに配した新作『Tarzan and the Lost City』が全米公開されているし(日本公開は未定)、来年(1999年)にはディズニーがアニメ映画として『Tarzan』を制作、はやくも音楽監督のフィル・コリンズが制作したサントラ盤が話題になるなど、勢いは衰えることがない。
 しかし、バローズ・ファンとしては忘れるわけにはいかないのがTVシリーズの存在だ。映画と違ってわれわれの目に触れることが少ないTVシリーズだが、アメリカではしっかり作り続けられている。前記『グレイストーク』と『ロスト・シティ』の間が開きすぎると思ったら、TVでの新作シリーズが2本も作られていた。そのうちの1本がこれから紹介しようと思っている『Tarzan : The Epic Adventure』だ。全20話で、1996年に放映されている。
 この作品を無視できない理由は、各話の小題を見れば明らかだ。episode 15 :Tarzan and the Mahars『ターザンとマハール族』 、episode 16 :Tarzan and the Amtorans『ターザンとアムター人』 。そう、ターザンがマハール族と戦ったり、アムター(金星)を訪れたりするのだ(ここで描かれるアムターはバローズの金星というよりは樹上生活者の秘境といった扱いらしいが、カースン・ネーピアも登場するらしい!)。残念ながら私はこの2話は未見だが、パイロット版である2時間スペシャルを観ることができた。このエピソードの中でターザンはペルシダーを訪れている!
 宇宙軍の益満氏のホームページによれば「原作に忠実」というのがこのTVシリーズのふれこみだったという。真偽はともかく、制作者が作家バローズを意識していることは小題を散見するだけでも明らかだ。ターザン・シリーズの原題に近いものがいくつかあるし、オパルのラー(韓国系の資生堂モデルが演じている。けっこう神秘的で美しい雰囲気を出していて、いい)も登場するし、なんといっても前述のとおり、他のバローズ作品が登場してくるのだ!
 スペシャル版のストーリイなどは本HPでもTVシリーズやノヴェライゼーション本の紹介をしていることでもあるし、そちらを見ていただければと思うが、ニコラス・ロコフがマハール族の女王が変身した美女(逆三角形のマッチョな肉体の局部のみ隠したすごい格好)に取り入り、それとターザンが対決するシーンはもうエンターテインメントの極みだし、バローズ・ファンだったらなんといっても最初にターザンがペルシダーに迷い込んだときの背景――徐々にせり上がり、空にとけ込んでいく地平線――を見ただけでも大興奮間違いなしだろう。
 勘ぐるならば、このTVシリーズのプロデューサは間違いなくERBファンである。おそらくは映画のターザンとリバイバルされたERB作品の両方の熱心なファンだったのだ。そうした世代が、発言力のある立場に立ってきたことで、こうした作品が世に出るようにもなった。これは、最近日本でウルトラマンの新作TVシリーズが放映されていることにも関係するかもしれない。ウルトラマン世代が発言力を持ってきたことでこうした企画が通ったのではないか? 同様に、ERBもリバイバル・ブームの中で育った世代が番組を制作できるようになったのだろう。それを裏付けるかのように同時期、ERB+ターザンに関する動きがアメリカでは目立った。前述の立て続けの映画企画。まぼろしのターザン新作の発掘。DEL REY BOOKSでのターザン・リバイバル。ダークホース社での企画コミック。トレンドマスター社によるフィギュアの発売。偶然か単なる波及効果かもしれないが、ファンとしては夢を見ていたい。
 最後にもう一つだけ。このTVシリーズの放映にあわせてトレンドマスター社が発売した各種のフィギュアには、ターザンやマハール族以外にデジャー・ソリスやタルス・タルカス、ゲークらがいる! もしかしたらバルスームも訪れていたのだろうか? わたしはTVシリーズを通してみていないので、この点については不明である。

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