エッセイ Essey for ERB's world


5周年と10万人へのありがとう(2)

written by Hide

20 Nov.2001


 幸いなことに、といえばいいのだろうか、バローズに関する資料は豊富だった。
 東京創元社と早川書房から出ていた文庫本は全部所有していたが、その巻末の解説に、発表順、刊行順それぞれの著作リストはもとより、未訳作品も含めた解説も収録されていた。特に野田昌宏(宏一郎)氏の解説は、多くはアメリカの同人誌からの転写であることは明らかだったが、そのせいもあってか、資料的な充実度は相当なものだった。
 考えてもみてもらいたい。他の作家で、こんなに簡単に全作品リスト、それも雑誌発表順と単行本収録順の両方が手に入る作家はいるだろうか? そして、各種用語辞典に地図に……アメリカのマニアの仕事もすばらしいが、それをアメリカのファンとおなじノリで「日本でもどうだい?」とばかりに紹介してくれた野田氏のサービス精神には感謝したい。
 書誌データには困らなかったから、これをどうまとめていくかだけの作業になる。くわえて、各文庫表紙裏にあったあらすじの収録。当初の予定ではここまでさえしないつもりだったのだけど、もう、とまらなくなった。焼けぼっくいに火がついた、というのだろうか。バローズの文庫本を隅から隅までなでまわし、HPとしてアップしていく。
 それだけでもう、楽しかったのだ。まわりの友人にはこんなことをしているよ、と知らせてはいたが、かつてのSFサークル時代の友人とは疎遠になっていたから、誰も感心すらしてくれない。SF全般に関するサイトならまだしも、特定の、それも50年も前に死んだ作家なのだ。ディックとか田中芳樹ならそれなりに人も来ようが、最近じゃ書店で見かけることもなくなったバローズじゃねえと、なかば諦観しつつ更新作業を行っていたら、おなじネスク(プロバイダ)のミステリファンの方からメールをいただいた。いまはプロバイダを移っているが、MIG(映画・ミステリ情報)がそれ。
 やはり、うれしかった。だれか見ていてくれる人がいる。かりにも公開しているのだから、見てくれて、ましてやエールをもらったりすれば、うれしいものだ。そこですすめられて、検索サイトに登録することにした。yahooも日本版がスタートしたばかりで、登録が簡単だった頃だ。登録は手当たり次第だった。さらに、SF関係のサイトにもメールを出してみた。アメリカのERB関連サイトにもつたない英語のメールを送りまくった。
 ちょうど、スキャナを購入して画面がカラフルになってきていたのも積極的になりだす要因だったと思う。これなら、見てもらっても恥ずかしくないかな、という思いがわいたのだ。
 反響は、大きかった。まずは海外サイト。ほとんどのサイトが相互リンクしてくれ、さらに各種資料をメールや郵便で送ってもくれた。SF美術館の井岡さんがメールをくれたのもこのころだった。マニアというか、コレクターだよね。びっくりした。パルプ誌なんて、日本じゃ野田さんのようなプロのひとしか集めてないと思ってたのに。おかげで私も、1冊だけターザンが収録されたパルプ誌を入手できた。
 そして、もうひとつのバローズ・サイトが誕生した。大学生のはたやさん。しばらくでなくなってしまったが、ゲーム機の格闘ゲームに火星シリーズのキャラクターを設定して闘わせ、トーナメントを競わせる様子を実況中継する、などといったわたしにはとうてい思いもつかないような企画を次々実行して、たのしませてくれたものだった。現役のバローズ・ファンとしては異例の若さだが、おじいさんから主だった本を譲り受けたとかで、なるほどそういう手もあったかと思い知った。私の子供も大きくなったら……読んでくれないかなあ。
 当サイトにエッセイなども寄稿してくれたカサイショウジロウさんとの出会いもこのころか。かれも比較的新しいファンで、偶然店頭で手に取った『類猿人ターザン』に感激したのだという。メディア関連の仕事で渡米の機会も多く、ターザンのコミックなどを多く発行しているダークホース社にもよく訪れていたようで、いろいろと教えてくれた。トレンドマスター社のフィギュアなどもわざわざ購入して送ってくれたり。
 あとは、そう、溝口さんとの出会いも大きかったか。カナダに留学されてしまったが、ネット上のSF者のイベントDASACONの首謀者のひとりでもあった溝口さんは、DASACON賞にノミネートしてくれたほか、掲示板にも書き込んでくれたし、当サイトのヒット企画のひとつである翻訳プロジェクトにも真っ先に手を挙げ、参加してくれもした。SF人脈の豊富なかたで、いろいろと情報を教えてもいただいた。
 そんな中に、小林さんのサイトもあった。

<つづく>

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