ジョン・カーターのライヴァルたち

洞窟の女王シリーズ
She series

サー・ヘンリー・ライダー・ハガード:著/大久保康雄:訳 東京創元社/創元推理文庫帆船マーク


history/初出

  1. 『洞窟の女王』
  2. 『女王の復活』

comment/コメント

 かつてパソ通をしていた頃のわたしのペンネームはAshaだった。これはA者、すなわち成人した少年Aという意味があるのだと当時は言い張っていたが、実際のところ、でどころはHRHの〈洞窟の女王シリーズ〉のヒロイン、文学が生んだ史上最大最高の美女、永遠の美しさを誇るアッシャにある。それほど、わたしは一時期このシリーズに入れ込んでいた。そして今を去ること100年前、われらがバローズもまた、同様にこの作品に入れ込んでいたことはもはや定説である。
 時期が来るまで見てはいけないという古文書に記された秘境の王国。この「はしがき」を導入部に展開される冒険小説というテクニックはバローズも得意とするところだ。最初の旅は『火星のプリンセス』の導入部を思わせるし、主人公と相棒のキャラクター設定は〈地底世界シリーズ〉にそのまま受け継がれてもいる。謎の美女(女王!)と主人公が愛し合うというのもERBの好きなパターン。しかも舞台はアフリカとなると、〈ターザン・シリーズ〉のラーはアッシャが名前を変えて登場しているにすぎないことは一目瞭然だ。第1部の最後で失意にくれる主人公というのも初期のシリーズもののパターンであった。
 ここには、バローズの元祖があるということを、否定できるものはいまい。ただし、晦渋で読みづらさがあるハガードに比して、エンターテインメントに徹するバローズの読みやすさは否定できない。おもしろければどん欲に取り入れ、自分のものとして吸収してしまうたくましさが、バローズにはあるということだろう。

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