ERB作品感想文集


『ターザンと豹人間』

ハヤカワ文庫特別版SF『ターザンと豹人間


by satoco m.

シリーズの中では、ターザンの活躍があまり目立たない作品であった。
だが、これをカリブワナ(白人女性)とオールドタイマーと言う(素姓も名前も知らない男)のラブロマンスとしてとらえると、とてもロマンティックな作品に仕上がっていると思う。
ERBらしく、女性は相変わらず気が強くたくましい。ただたくましいのではなくて心美しくかよわい部分も持ち合わせてはいるが。
その女性が自分の力だけでは克服できないような困難な出来事が起こったとき、パートナーとなりうる男性とのロマンスが生まれる。そしてその二人の絡みに記憶喪失となったターザンが出てくる。(しかし、ターザンはよく頭を打って、何度も記憶喪失になるなぁ.......そのうちに頭が壊れてしまうんじゃないだろうか?)
最初のうちオールドタイマーという男の描き方が、いや〜ぁな男にかかれていたので、このまま悪い男の見本としてのたれ死ぬのでは?と思ったが、途中からずいぶん彼を表現する文章が変化してきた。
今までのシリーズだと悪い男は悪い男のまま改心せず悪役として描かれるのだが、読者の読みを裏切ってだんだんイイ奴に変わっていくのが面白い。
私は、単なるハンサムな善良で心清い正義漢なんか好みじゃない。男は多少ワルな方がかっこいいのだ。
カリブワナもすんなりなびくんじゃなくて、ペルシダーのダイアンのように表面では男の愛を拒否しながら、心の中で熱愛してる。ああこれがかっこいい女性なんだよなぁ〜といつも感心する。
ERBの本はだいたい先が読めるんだけどそれでも良く出来たロマンスだった。
でも、一つだけ不満を言わせてもらえば、カリブワナとキッドが兄妹だと言う設定だ。
これは、短いページで、恋敵を削除してしまうバロウズの得意技がまた出ている。ライバルなんて多いほうが面白いのに・・・・これは個人的な感想かもしれないけど。
ターザンもこの二人を支援して命を何度も助けたりしてたけど、印象がどうしても薄い。
やはり、恒例の記憶喪失のせいか? バロウズさん!もうターザンの頭を打つのはやめて下さい。
もう何億個の脳細胞が死んだだろうか。このままではあと数回で彼は間違いなく頭蓋骨陥没で亡くなってしまうぞ〜。
二人の恋愛を成就させるため何人かの善人悪人が死んでしまった。でもそれでもいいのだ。
彼らが幸せになれば!!(ふぅ〜)

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