ERB作品感想文集


『ウォー・チーフ』

創元推理文庫拳銃「ウォー・チーフ


感想文(E.R.バローズに捧げるパロディと思ってね)

by さと

初めて読むバロウズのシリーズに私はわくわくして本を開いた。
最初の5ページぐらいでちょっと挫折してしまった。なぜだろう?
理由をよくよく考えてみたが、今までのキャラと違って名前が長い。
そして、主人公ショッディジージとその恋人イシュケイネイに共感を
覚えなかったからだ。しかしここでめげてはいけない。何とか睡魔と戦いながら
もう少し読んだが、とうとうまぶたが重力に負けてしまった。
翌日から、ウォーチーフと私との戦いが始まった。とにかく読み終わらねばなるまい。
そして、感想文を書くのだ!私の使命は大変なものだった。
イシュケイネイはただ純でちょっと小生意気でかわいいのだが、私は好きになれない。
彼女は私の敬愛するダイアンのように行動する女性ではなく、ひたすら受け身のタイプだから。
彼の愛をそのまま受け入れて、縁談が来れば多少は悩むけど、彼をあきらめてしまう。。。
そんな女性に思えたのだ。
話の中盤にさしかかると、なんとイシュケイネイは殺されてしまった。いままで、バロウズのキャラで
ヒロインが殺されてしまうというのはあまり読んだことがなかったから、どうしたのだろうと驚いた。
相変わらず私の戦いは遅々として進まなかった。脇役にも何か光る魅力が見いだせなかったからだ。
ウォーチーフこのまま戦いを投げて終わらせてしまおうか、心の中で悪い誘惑の声がささやいた。
途中で文を簡単に書いて送ってしまえばよいではないか。
私の心はぐらぐらと揺れた。
「わたしはけっしてあきらめない!」ジョンカーターが私に向かって叫んだ。
そうだ!!私はこの戦いを終わらせねばならないのだ。それも背を向けて逃げるのではなく、
真正面から向かってだ。愛するタルカス様のためにも、きちんと読了せねば。。
もう一度本に向かって私は意識を集中した。すると、ようやく私は舞台アメリカのインディアンの世界へ
と降り立ったのだ。
森の中で疾走するヒーロー、ショッディジージ。私は彼に見つからないようにそっと後をつけた。
すると、森の中からとても魅力的な女性が目の前に現れた。もう一人のヒロインウィチタ・ビリングズだ。
彼女は服装や態度はかなり田舎臭かったが、顔の表情がとても素敵だ。
ショッディジージより先に私は彼女に惚れてしまった。しかし、心の恋人ダイアンに比べるとちょっと見
劣りしてしまうところが悲しいが。。
ウィチタはショッディジージの先生や姉となり彼に優しい心を覚えさせたのだ。
人を残酷に扱わないこと。全てが彼の敵というのは間違いなのだと諭した。
多くの小説やドラマのように、先生と生徒の恋愛はうまくいかないことが多い。
おまけにショッディジージはかなり恋愛に疎いタイプだったから、ウィチタへの愛に気付くのが遅すぎた。
私の戦いも終盤に入り、残りページもあとわずかとなった。
このまま、彼は彼女の愛に気付かないのであろうか?人事ながらはらはらして、二人の行方を見守った。
バロウズはドラマの定説のように最後のページまでひっぱった。そして出てくるラストシーンの言葉。
「白人の娘はアパッチを愛することが出来ない。それは正しいことだ」と言って、彼は彼女にお別れを言っ
て去ってしまった。
そんな!!これからどうなるの?まだ細かい部分が解決していないではないか。
頭の画面には大きな文字で-続く-と表示されていたが、小説はもうエンディングに入ってしまった。
私はこの続きを見ることが出来ない。なぜなら、やっと手に入れた希少な古本だったから。
しかたがない、私の戦いはまだ終わっていないのだ。
映画監督をバロウズから私にバトンタッチして、新しいストーリーを始めることにした。
アパッチの愛--どこかで見たような題名だが、構わない。私が望み通りのストーリーにするのだから。
私が今度の監督だから。ようやく戦いは終わった。次は創作の戦いとなる!


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