ターザン映画について
About Tarzan Movie


『類猿人ターザン』

プレイボーイ Nov.1981 いやまあ、下品な、とか言わないでほしい。雑誌『日本版プレイボーイ』1981年11月号である。もう20年近くも昔のこと、1本のターザン映画が制作された。その、特集記事が掲載された号である。提供者は掲示板などで盛んに話題を提供してくれている、大石さん。ありがとうございます。
 たしか『類猿人ターザン』の邦題がついていたこの映画。じつは、わたしがリアルタイムで見た最初のターザン映画なのです。ちなみに次が『グレイストーク』で、その次はおそらくディズニーの『ターザン』ということになるのでしょう。キャスパー・ヴァン・ディーン&ジェーン・マーチの『ターザンと失われた都市』がいきなり公開されない限りは。しかし、ターザン映画も減ってきたなと思っていたけれど、こうしてみてみると10年おきに定期的に作られているのですね。その間にジョー・ララのTVシリーズなんかもあって、そのスペシャル版は日本でもビデオ化されているし。やはり不滅のヒーローなんだ、ターザン。
 話を戻そう。この映画が『プレイボーイ』で取り上げられるのは、もちろん、主役(ジェーン役)がかの『テン』のボー・デレクであったから。つっても、最近じゃわかんないか。要するに、セクシー映画だったわけですな。たしかアメリカでは成人指定だったのだが、日本公開時は一般映画として公開された(だから高校生だったわたしも見に行けた。ラッキー)。理由として考えられるのは、ターザン映画である以上、子供や家族連れの観客が期待できると興行側が判断した、といったところでしょう。結果としてボカシ(当時はモザイクという技術はなかった)が入りまくった、おそらくは(編集の)ハサミも入りまくった映画になってしまった。
 この判断の是非はいうまい。ただ映画としてのおもしろさを言うなら、うん、これならいいんじゃないか、というのが僕の感想だ。
 ターザン映画はこの時期、行き詰まっていたはずだ。『スターウォーズ』が公開されて4、5年。この間、『未知との遭遇』『レイダース』『スタートレック』などなど、ヒーローが活躍する娯楽映画はSF映画という常識が固まりつつあった。オイルショック後の先の見えない時期で、バブルはまだ遠く、アメリカは双子の赤字なんてのを抱えて青息吐息だった。アポロ計画も終了し、夢は映画でとばかり、現実から飛躍したテーマがもてはやされていたわけだ。ターザンだって現実離れはしてるけど、時代は「反自然」の方向で進んでいたし、冷戦構造があった時代だから、現実に戦乱の続くアフリカを舞台に自然児(映画のターザンは子供のイメージはいっさいないけどね)と動物と悪い白人ではしゃれにならない。その点、環境問題が叫ばれている現在、何本ものターザン映画(TVも含む)が作られているのも時代の要請かなと思えなくないかな。
 とまれ、この時期にターザン映画をつくろうなんて、企画する方もする方だと思えるのだけれど、この雑誌を読んで疑問のひとつは解けた。
 ターザンの映画化権を持っているワーナーが作った映画じゃないんだ、これは。MGMはワーナー以外では唯一、ターザンの映画に関する権利を持っていた。ワイズミュラーとオサリバンの『類猿人ターザン』再映画化権がそれだ。このほこりをかぶった権利を、セクシー女優のボー・デレクと夫のジョン・デレクが買い取った。そして、ボーのプロデュース、ジョンの監督で、ボーを主役としたターザン映画(ジェーン映画と言うべきか?)を作ったわけだ。
 ターザン映画は自然を舞台にした人間の野生がテーマだ。この点、ERBの原作とは異なるわけだが、映画は数十年をかけて独自のテーマと世界観を確立させていた。つまり、人間の自然のままの姿を描くには最適な枠組みだというわけだ。その枠に、ボーが入った。彼女の出世作となった映画のタイトル『テン』にもあらわれているような、10点満点の女。雑誌の表紙を見てもわかるでしょう? 何という美しいプロポーション。下の方の、日本人タレントのヌードの方がずっと下品な感じがする。20年前にこれですからね。プレイメイトのグラビア向けヌードともまたひと味違った、完璧な肉体といいましょうか。くびれ方が人間業ではありません。しかし、完璧な肉体もいつかは崩れる。ボーは時代の変化を待てなかったのでしょう。あれから20年たった今、ジェーン役はボー・デレクよりはジェーン・マーチかなと思うしね。
 しかし、制作に監督までデレク夫妻でこなしちまおうというこの自己中ぶりはいいですね。しかも再映画化のもとがあの伝説のセクシー女優モーリン・オサリバンの映画なのだから、ボーの演技にも力が入ります。全編ほとんど裸。しかも、ターザン(演じるはマイルズ・オキーフって、知らないよね)とあって出てくる言葉が "I'm stil virgin." だって。思わずつっこみを入れたくなります。他にも「男のひとに触るの初めて」なんてなことも言ってたっけ。観ていて笑っちゃいそうでした。
 そうはいっても、しっかりターザン映画していて、その点はよかったと思いましたね。自然賛歌と文明批判。人間の肉体は美しい、みたいな。これが後年の『グレイストーク』になってくるといただけない。原作に忠実だとか言われていたけど、どこが? ってかんじだったし。『炎のランナー』のスタッフだったらしいけど、あれは失敗でしたね。
 というわけで、『グレイストーク』については稿をあらためて書くことにしましょう。

『グレイストーク ターザンの伝説

 原作に忠実な「ターザン映画」が作られる、という記事を見たのはいつのことだったろう。主演はクリストファ・ランバート。健康的な野生美が取り柄のはずの、いわゆるターザン映画のターザンとは全く違う、内臓が悪そうな三白眼の無愛想な男。歴代のターザン役者のようなアメリカ人ではない、ヨーロッパ国籍の役者だったと思う。たしかシェイクスピア関係じゃなかったかな? 肉体も、精悍ではあるかもしれないけど、およそターザンのイメージじゃない。いまでいうと、ペルージャの中田みたいな感じ。


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