ERB評論集 Criticsisms for ERB


野田昌宏『武部ERBのSF世界』

岩崎書店刊武部本一郎SFアート傑作集1 火星の美女たち解説


〈火星シリーズ〉

 〈火星シリーズ〉が創元文庫ではじめて邦訳されたのは1965年(昭和40年)のことであるが、このとき、編集長の厚木淳氏が本のなかにイラストと口絵を入れることを決断したことが、そしてさらに、その画家として武部本一郎を起用したことが、今にして思えばこのシリーズの日本における運命を決定づけたわけである……。
 国内はもちろん、海外における反響は爆発的なものであった。武部氏ならではの東洋的なバタ臭さあふれる主人公たちと、奔放なイマジネーションの極致ともいうべき怪物たちの織りなすバローズの空間は、数あるERB(エドガー・ライス・バローズ)の画の世界のなかでも抜群のものであることは間違いない。
 南軍の大尉ジョン・カーターは、南北戦争終了後、探鉱者としてアリゾナの山中をさまよううち、インディアンに襲われて伸間は殺され、当人は洞窟の中に追いつめられてしまう。絶体絶命のピンチがそうさせたのか、とつぜん、彼の体は浮きあがり、大気を衝いて上昇をつづけ……到着したところがなんと、火星――。そしてその火星には4本腕の緑色人、地球人をさらにすばらしくした赤色人などが入り乱れ、8本足の火星馬や大小の空中船を駆って戦乱につぐ戦乱……。たちまちまき込まれたジョン・カーターは、火星の低いgも幸いして大活躍、ついに火星帝国ヘリウムの姫君デジャー・ソリスを妃に火星皇帝へというのが、バローズの名を不朽のものとした名作〈火星シリーズ〉の発端である。

火星の秘密兵器(P4,5)

 〈火星シリーズ〉の第7作。ハストールの戦士ハドロンが、誘拐された恋人を救出すべく、強国ジャハールに繰りひろげる大冒険である。8本足の火星馬ソートにまたがっているのは、やはりジャハールの皇帝トゥル・アクスターにさらわれた美少女タヴィアだろう。恋人を求めてザナトールの廃塘へしのびこんだハドロンは彼女と出会い、森の中に隠してある彼女の飛行艇へ向かう途中だと思われる。ハドロンは、はじめこの少女を少年と勘違いするのだが、この前後でかわされる2人のみずみずしい会話が実によい。この画は、そんなタヴィアという少女の雰囲気を実にうまく捉えている。

 事もあろうにジャハール皇帝のスパイだとみなされたハドロンは、トジャナスの王から「死神」という、得体の知れぬ刑を宣告され、同じくスパイとにらまれたヌール・アンと共に、鉄檻に入れられて地下深く吊りおろされる。そこに待っていたのは――というのが右頁のシーンである。

火星のチェス人間(P6,7)

 〈火星シリーズ〉のメイン・キャラクターであるジョン・カーターの娘ターラを主人公とする『火星のチェス人間』はシリーズ第5作目で、私見ではあるが、シリーズ中もっともできのよい、面白い作品だろう。冒頭、自尊心を傷つけられたターラが慣然と飛行艇でヘリウムをあとにするのがこの絵である。そして、武部本一郎が全世界のバローズ・ファンの間に爆発的な反響をまきおこしたのは、まさに、この絵にもりこまれた、不可思議な工業デザイン感覚(!)にもとづくものなのだ。スマートさと古風さが見事に融合した飛行艇の美しさ。ターラの表情もよい。

 人間を駒に使ってチェスをやるというのはべつに珍らしくもないが、マナトールで行われる人間チェスくジェッタン〉では、ぶつかった駒どうしが闘い、相手を殺すことによって勝負がつく。この日ひらかれた皇帝競技会の最終戦に勝利者側への賞品として与えられることになるのは、ヘリウムの王女ターラ……。
 黒とオレンジという色のとり合わせはバローズによるものだが、これはもともと火星・南極の黒色人種と北極の黄色人種の戦いをあらわすものだそうで、バローズ自身で詳細なルールをつくっている。
 この作品にはカルデーン、ライコールなど、バローズの全作品中でもとびぬけてユニークな怪物が登場するのだが……。

火星の合成人間(P8,9)

 〈火星シリーズ〉第9作。火星の怪科学者ラス・サヴァスは、自らつくり出した含成人間を使って火星全土の征服を企図する。この一味に捉われた恋人を救うべく、ヘリウム海軍の士官ヴォル・ダーはみずから合成人間へ変身して敵地へ侵入する……。
 その、恋人ジャナイがうちまたがっているのは、火星人たちが手軽な乗りものとして利用している巨鳥マラゴール、背後にかすんでいるのはアムホールの市街か……?

 ヴォル・ダーと美女ジャナイの救出に向かうヘリウムの空中艦隊の威容。これなどが、もう、日本版〈火星シリーズ〉でしか味わえぬ醍醐昧なのである。旗艦とおぼしき中央の大型艦の左舷前方につきでている三つの白い突起は艦載艇らしく、すぐ下に1隻いるのはたったいま母艦を発進したところか、右下には単座とおぽしき艇もあり、左下にはいかにも精悍な――そう、私は一瞬、旧海軍の〈高雄〉を思い出したが――中型艦が全速航進している。見れば見るほど味のある画だ。

火星の交換頭脳(P10,11)

 シリーズ第6作にあたるこの作品は、なんと、世界初のSF専門誌として知られる〈アメージング・ストーリーズ〉、その創刊2年目に企画された〈アメージング・ストーリーズ・アニュアル〉(年刊)のため、ヒューゴー・ガーンズバックの依頼で執筆されたものである。
 原版は、当時のアメリカにおけるSFイラストの第一人者F・R・ポールによって、主人公の芙女ヴァラ・ディアに老外科医ラス・サヴァスが脳の移植手術を行っているシーンが描かれているが、こちらは、その美女ヴァラ・ディアと、巨神タールの神像とを組み含わせた画柄である。

 そして――
 これこそ武部本一郎にしか描けなかった火星なのだ。自艇をやられて、止むなくトゥーノルの偵察艇を奪いとろうと主人公ユリシーズ・パクストンが仲間ともども、敵船へ乗り移るところである。
 「死にに行こうぜ、隊長!」というゴル・ハジェスのどなり声が聞こえてきそうなシーンである。

火星の大元帥カーター(P12,13)

 シリーズ第3作の『火星の大元帥カーター』は、『火星のプリンセス』にはじまる最初の3冊によって形成される3部作の完結編である。“品評会で入賞したヘレフォード種の牡牛くらい“の大きさがあるスズメ蜂そっくりの怪物。戦うのはもちろんジョン・カーターそのひと。ケオルの山中でこいつと出くわしたとき、たしかカーターは愛大のウーラを連れていたはずだが、このシーンには描かれていない。

 火星の北極には300メートルほどの高さにまで磁石の柱がそびえ立っており、これを中心に黄色人種の都市カダブラが形成されている。そこに、“禁断の北極の謎を解こうとするばか者”の飛行艇が接近しすぎて、磁柱のとりことなる。あわててデッキから発進して難を避けようとした小型艇100隻も、船体はアルミニウム鋼でつくられているため、ぐんぐん引き寄せられて……。柱の下部にうず高く堆積しているのは、そんな目にあった飛行艇類のスクラップである。

火星の透明人間(P14,15)

 『火星の透明人間』はシリーズ第8作。マッド・サイエンティストであるファル・シヴァスは、美女の生体解剖から脳の機能を解明し、人工頭脳つき宇宙船を完成しようとしている。ゾダンガの殺し屋一味を征伐すべく潜入したジョン・カーター、その裏をかいた殺し屋たちは、王妃デジャー・ソリスを誘拐して衛星サリア(フォボス)へ幽閉してしまう……。そんな波乱万丈の物語のフィーリングを実によく伝えている絵だと言えよう。右上が美女ザンダか? 左上は当然デジャー・ソリス。この作品にはもうひとり、タリッドの皇后オザラという魅力的な女性が登場するのだが……。

 タリッドで捕えられたジョン・力一ターが牢獄の中で出くわしたのが、このグロテスクなキャットマン。しかし、力一ターはこの怪物とのコミュニケーションに成功し、彼がマセナ人のアムカと知り、ともに戦うこととなる。

火星の女神イサス(P16,17)

 『火星の女神イサス』はシリーズの第2作。地球から戻ってきたジョン・力一ターは、さらわれた妻のデジャー・ソリスを追って大冒険をくりかえすが、この作品のなかではついに奪還するには至らない。このシーンはザット・アラースの空中艦隊との決戦で、敵艦へ移乗しようとするジョン・カーターだろうか……。

 こちらは、地下深くファースト・ボーンの基地へ幽閉されたジョン・カーターが、ゾダールと赤色人の少年ひとりと共に、地底海オメアンの基地から快速艇で決死の脱出をやってのけるきわめつけのシーン。これなども、アメリカのERBファンの間に熱狂を呼んだ画のひとつである。そして間もなく、力一ターは、一緒に脱出した赤色人の少年こそ、彼の息子カーソリスであることを知る……。

火星の古代王国(P18,19)

 シリーズ第10作の本編は、題名の作品の他に「火星のブラック・パイレーツ」、「火星の冷凍人間」、「火星の透明人間」と、1941年の春から秋にかけて発表された中編4作からなっており、単行本の原題は「ガソールのラナ」。描かれている美女がそのラナで、ジョン・カーターの孫娘である。

 「火星の冷凍人間」のなかで、戦争に備えて人間を冷凍して保存する――という1シーン。

火星の巨人ジョーグ(P20,21)

 『火星の巨人ジョーグ』は、シリーズ第9作、1941年に〈アメージング・ストーリーズ〉に発表された中編である。
 ピュー・モゲルという合成人間が、赤色火星人の死体を材料にして身長40メートルという巨人ジョーグをつくる。誘拐されたデジャー・ソリスを奪還すべくのりこんだジョン・力一ターは、親友のタルス・タルカスともども捕之られ、ジョーグの掌の中に……。

 やがて巨人ジョーグと大白猿の大軍がせまり、ヘリウムはもう風前の灯。カントス・カン指揮するヘリウム空軍必死の反撃も巨人の強烈な梶棒の前にはひとたまりもない。よく見ると寸法がおかしいのだが……。
 この画の時点から間もなく、いよいよ巨鳥マラゴールにのった大白猿の編隊が進入してくる。もはやこれまでというそのとき、ヘリウム空軍が投下したのはパラシュート付きの3本足火星ネズミ。大白猿、マラゴールともに天敵の出現に算を乱して……。一方、巨人ジョーグをリモート・コントロールしていたピュー・モゲルのところへ捨て身のジョン・カーターが……。

火星のプリンセス(P22,23)

 〈火星シリーズ〉第1作。もともとバローズの諸作には1920年代からさまさ“まな画家が挿絵を描いている。ロイ・クレンケル、アレン・セント・ジョン……そして、最近では、ブーム的状況にあるフラゼッタ……なども描いており、それこそ枚挙にいとまがない。ERBのファンたちは、そんな挿絵をあつめ、原画をなんとか入手しようと、まさにファンならではの苦労をつみ重ねてきていた。
 そこに太平洋の向こうから、まさに彗星のように現われた武部ERBイラスト群の第1発がこれである。美女はもちろんデジャー・ソリス。世界的なバローズ研究家として知られるH・H・ヘインズのところへ私の送った1冊がセンセーションをまきおこし、今日まで、ERBファンたちの要望に応じて、私は、一体、何冊の創元文庫を世界各国へ送らされたことだろう。

 ジョン・カーターが火星にやってきて、その後、親友同志として生死を共にすることになるタルス・タルカスと出会って間もなく、彼等の一行はとつぜん空中船の空襲をうける。すきを衝いて地上から反撃した彼等は敵船へのりこみ、略奪の限りをつくす。その後、火を放たれた空中船が漂流していくあたりの描写は、全シリーズを通してもっとも美しいものである。

火星の幻兵団(P24,25)

 『火星の幻兵団』はシリーズ第4作で、観念の具象化した兵士の大軍同志が一大決戦を行うというダイナミックな山場をもち、ついにその幻の兵士が実体化してしまうというSFならではの着想も生かされている。
 画は、主人公のひとり、プタースの王女スビア姫と8本足の火星馬ソート。

 そして、スビア姫誘拐の疑いをうけたカーソリスが、父、ジョン・カーターの厳命をうけて救出に向かうのがこのシーンである。この飛行艇は力一ソリス自身の手によって開発されたオート・パイロットをもっており、ラジウムを動力源としている。武部本一郎が火星シリーズのなかで描いたさまざまな飛行機器のなかでもっとも美しい機体だ、と言ってよいだろう。そしてさらに、この絵は、その飛行艇を描いた何点かのなかでも最高のできである。ERBマニアどもの熱狂ぶりが眼に浮かぶ。

〈ペルシダー・シリーズ〉

 〈ペルシダー・シリーズ〉は〈火星シリーズ〉の第1作『火星のプリンセス』が現われてから2年目、1914年からはじまった地底世界の冒険シリーズである。地底といっても、これは17世紀から根強く論議されてきた地球空洞説をもとにしていて、地球の殼の裏側にもうひとつの世界があるというものである。この空洞の中心(つまり、地球の中心)にはもうひとつの太陽が輝いており、表側とは逆にこの世界の水平線は徐々に上へ向かってせり上がっており、当然のことながら夜はない……。鉱山主のディヴィッド・イネスは、老技師アブナー・ペリーとともに開発した地下試掘機――先端に巨大なドリルのついた円筒型地底車――で地底探検に向かい、この地底世界ペルシダーへ抜けてしまう……。

地底の世界ペルシダー(P26,27)

 シリーズ第1作目。描かれている美女は、さっそくサゴス族に捕えられたディヴィッドが危機を救うことになるアモズ族の虜囚、美貌のダイアン。そして背後に見えるのがつき抜けた地底車の先端部である。

 この地底世界にはさまざまな怪物が棲息しており、地上のジュラ紀・白亜紀の巨大爬虫類も多く、これは翼手竜か、ペルシダーを支配している怪物マハールが番大として使っているシプダール。ディヴィッドはこの怪烏を撃退してダイアンを救い、誤解を解くことに成功する。ダイアンが彼の妻となるのは言うまでもない。

恐怖の世界ペルシダー(P28,29)

 シリーズ第6作目。第5作目でドイツ空軍中尉フォン・ホルストを救出したあと、帰国の途についたディヴィッド・イネス
はさまざまな苦難に遭遇するが、ジュカン族の宮殿に迷いこんだところを捕えられ、なんと、そこで妻の“美貌のダイアン”と出会う。夫の訃報を信じない彼女は捜索に出て捕えられてしまったのだ。やっとこの狂人の宮殿を脱出したと思う間もなく、出くわしたのがこの、身長2メートルもあるという巨人蟻。

 人食い巨人アザール族に捕えられたディヴィッド・イネスは、かつて危いところを助けてやったマストドン〈マホおやじ〉によって、きわどいところを助けられる。

海賊の世界ペルシダー(P30,31)

 シリーズ第3作。やっと平和が訪れた地底世界ペルシダーにまたもや危機が迫まる。樺猛をもって知られるコルサール人の
海賊が大挙して押しよせてきたのである……。

 この作品の主人公は〈疾風のタナー〉、第1,2作からディヴィッドと苦楽を共にしてきたサリ族の王“毛深い男ガーク“――いまやディヴィッド・イネス皇帝の第1副官――の息子である。コルサール海賊の手から逃れたタナーは、地下の洞窟のなかで奇怪な食人族コリピーズに捕之られてしまう。

翼竜の世界ペルシダー(P32,33)

 シリーズ第2作。もちろんいまやディヴィッド・イネスの妻となった美貌のダイアン、そして横に控えているのは、ディヴィッドによって救われたヒエノドン(原始的な大)のラジャだとおもわれる。はるか彼方にブロントサウルスか?

 第1作の最後にいったん地上に戻ったディヴィッド・イネスは“醜い男ジュバル”の奸計にかかって危機におちいる。そして、やっと戻ってきたディヴィッドがついにダイアンとめぐりあったのは、この地底世界を支配している兇悪な爬虫類マハールのひしめく闘技場。穴居虎タラグと対決させられている彼女の命は風前の灯。そこに3匹のシプタールが急降下してきて、なぜか、そのタラグを吊りあげてもっていってしまう……。

ターザンの世界ペルシダー(P34,35)

 〈ペルシダー・シリーズ〉第4作。著者エドガー・ライス・バローズの居所、カリフォルニア州ターザナ(ロス・アンジェルスの北東にあたり、もちろんターザンにちなんで名付けられた実在の場所)に住むジェイスン・グリドリーは、彼の発見した“グリドリー波”の通信機をテスト中、地底世界のアブナー・ペリーが発信するかすかな電波を受信する。“ペルシダーの第1世皇帝ディヴィッド・イネスがコルサールの海賊に捕之られ幽閉されている……”
 この危機を救うのはあなたしかないとジェイスンに口説かれたターザンは、飛行船O=220号を駆って北極にある大穴からペルシダーへ、ディヴィッド・イネス救出へのりこむことになる。
 しかし、地底世界に到着して間もなく、ターザンは翼竜に襲われ……。

 そしてジェイスンー行に襲いかかるステゴザウルス。中世代の恐竜類を描いた絵は珍しくないが、やはり武部本一郎ならではのダイナミックな絵だろう。

石器の世界ペルシダー(P36,37)

 シリーズ第5作にあたるこの作品の主人公はドイツ空軍中尉フォン・ホルストである。飛行船0=220号で北極にある大穴からこの地底世界ペルシダーに入ってきて仲間とわかれてしまい、バスティ族に捉えられ奴隷にされてしまう。ここでめぐりあうのが、やはり奴隷の身の上の、ロ・ハール族の娘ラ・ジャ。〈ペルシダー・シリーズ〉の後半は、前半の巨大爬虫類系統の怪物に対して、マンモス、ボス、マストドンなどの哺乳動物が活躍する。これがその一例である。

 この世界にまぎれ込んで間もなく、フォン・ホルストは巨大な怪鳥に襲われる。当然、彼は死を覚悟したのだが、怪烏のほうは殺す気配もなく、凄まじい悪臭を放つ胸の袋へ放りこまれ、とある岩山の洞穴にはこばれる。そこには、死よりもおそろしい運命が……。

美女の世界ペルシダー(P38,39)

〈ペルシダー・シリーズ〉の最後をかざる作品は「ペルシダーに帰る」「青銅器時代の人間」「剣歯虎の女」の運作短編3作からできている。
 ディヴィッド・イネス皇帝のおさめるサリの国で、アブナー・ペリーの作った気球をたのしむ“美貌のダイアン“。だが、この直後にロープがはずれて気球は彼女をのせたまま……。

 サリの戦士“快足のホドン“と、カリの王ウースの娘オー・アア。この2人がディヴィッドの危機を救う。

〈金星シリーズ〉

 〈金星シリーズ〉は1932年から1941年にかけて執筆された計8編が5冊にまとめられているが、このシリーズの主人公はカースン・ネーピア。本来、火星に向かうつもりで地球をあとにした主人公が、ふとした手違いから到着したのが金星――というわけで、さまざまな冒険のすえ、美女ドゥーアーレーを妻としてゴルヴァの皇太子となる……。

金星の魔法使(P40,41)

 『金星の魔法使』はシリーズ第5作、最後の作品であるが、はるかはなれたドナックの地に住む魔法使モーガスは、自分の言うことをきかぬ人間たちをザルダーという醜い動物に変えてしまう。

 カースン・ネーピアは、愛娘をモーガスに奪われた父親の頼みで、親友の生物学者イローシャンの設計した飛行機で魔法使モーガスの本拠へと侵入する。

金星の死者の国(P42,43)

 シリーズ第2作。カースン・ネーピアがクーアード王の王女ドウーアーレーともども、烏人のとりこになったところで終わる第1作を受けて書かれたのが、この『金星の死者の国』。
 やっとのことで脱走に成功した2人が、危険につぐ危険を切り抜けて深山の断崖にかかったとき、現われたのがこのトカゲの化物ヴィア。カースンは捨て身の攻撃をかけて、見事にこの怪物を追い払う。

 しかしドゥーアーレーはモロブの王スコールに奪われてしまう。苦心の末、スコールの宮殿に侵入したカースンはドゥーアーレーの助けによってスコールを倒し、アンドウの王女とともに脱出を計る。左でドアを開こうとしているのがカースン。右の美女2人のうち、どちらがドゥーアーレーか?

金星の火の女神(P44,45)

 シリーズ第4作。数奇な運命にもてあそばれる美女ドゥーアーレーとともに、カースン・ネーピア波乱万丈の冒険はつづく。
 金星地図をバックにしているのはもちろんドウーアーレー、右に見えるのは金星の兇獣サーバンだろうか……。

 母国へ向かう2人はアムターのアメーバ人間アタ・ヴー・メド・ロに捕えられ、生きている標本として博物館に陳列されてしまう。そして、見ている眼の前で彼等の体は二つに割れ、分裂をはじめ……。

金星の海賊(P46,47)

 〈金星シリーズ〉の第1作。金星にたどりついたカースン・ネーピアは、国王ミンテッブの宮殿に滞在することとなる。ここで彼は王女ドゥーアーレーを見そめるのだが、それから間もなく、襲ってきた鳥人クランガンによって彼女はさらわれてしまう。

 樹の幹で牙をむいているのは金星クモ・タレル。こいつの巣に使われる糸は非常に強いので、金星では大いに重宝している。ある日、友人のキャムロットとともにクモ狩りにでかけ、樹上によじのぼりはしたものの……。右の金髪がカースン・ネーピア。タレルにつかまり、逆さになっているのがキャムロット。

金星の独裁者(P48,49)

 シリーズ第3作目。ドゥーアーレーを求めて大洋を航進するカースン・ネーピアの船は、しばしばこのロティク(三つ眼)という体長300メートル! にも及ぶ怪物におびやかされる。眼球は頭の上からつき出た触手のようなものの先端についており、これだけを水上に出して潜望鏡の役目をはたす。

 コルヴァの国の支配者メフィスとその軍隊。このメフィスという人物は、当時めきめきと出てきたヒットラーを戯画化したものだといわれている。ハーケン・クロイツ風の旗に御注意。


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