エッセイ Essey for ERB's world


オールドSFファンのつぶやき
About Me:old fan of science fiction stories


 みなさん、初めまして。あるいは、お久しぶりです。突然ではありますが、みなさんはどういった少年時代をおくりましたか?
 1964年7月4日に、ぼくは生を受けました。まだ学生運動なども盛んで、経済は高度成長を続けたその時代に少年時代をおくった僕は、あたりまえのようにウルトラマンに熱狂し、仮面ライダーにあこがれ、マジンガーZに胸を躍らせました。僕にとっての60年代、70年代は、空想が、夢が、明るさをもって語られ、そして現実のものになっていく、そんな時代でした。
 しかし中学、高校と進学する中、夢がその輝きを鈍らせ、希望はどんどんしぼんでいきます。これが僕にとっての80年代に相当します。そんな中、夢を見続けられるものがひとつだけありました。SFです。そこには空想が、夢が、いきいきとつづられていたのです。ニューウェーブともサイバーパンクとも縁のないそれは、たとえばエドモンド・ハミルトンであり、フレドリック・ブラウンであり、アイザック・アシモフであり、そしてなんといっても エドガー・ライス・バローズ でした。
 バローズに最初に接したのは小学生の頃で、「 類猿人ターザン 」を子供向けにリライトしたものでした。それはそれでおもしろく、かなり感動もしたのですが、当時は経済力もなく田舎に住んでいて近くに書店もなかったので、親が買ってくれるものを受け身で読むだけで終わりました。(しかし、親には感謝しています。全55巻の小学館世界名作全集には、上記のターザンのほか、ウェルズ「宇宙戦争」、ドイル「マラコット海淵」、ベリャーエフ「無への跳躍」、チャペック「山椒魚戦争」、ヴェルヌ「十五少年漂流記」、ハガード「洞窟の女王」、海野十三、ミステリではホームズはもちろん、ルパン「奇岩城」や思考機械「13号独房の問題」まで収録されており、現在の自己形成に大きな影響を受けたことは間違いありませんから)
 やがて中学生になり、小遣いも少々得た時に書店で求めたのは「若きウェルテルの悩み」や「車輪の下」といった、名作全集の流れを汲むものだったわけですが(生意気ですよね)、同時に目をとめたのがバローズ「 地底世界ペルシダー 」でした。これにはさらに前章があって、図書室ですでにこれは読んでいたのですが(少年向けにリライトしたもの)、これを訳していた野田昌宏氏の文章がとにかくおもしろい。まあばかばかしいおもしろさで、勝手なエピソードは挿入されているは、結末は違うはのむちゃくちゃなものだったのだけれども、そのときはそんなことなど知るはずもなく、続編が読みたいばっかりに、まず大人版もと買ったのでした。
 これで、僕の人生は変わったと思います。もともと「ロビンソン・クルーソー」や「十五少年漂流記」を読んでは地図を書き、年表を作っていた空想世界好きの子供だったので、異世界、異生物のみならず架空の言語まで創造してしまうバローズの世界にのめり込まないわけがありません。この感触は冒険小説がすきな当たり前の男の子ならみな共感してくれるのではないかと実は思っているのですが、バローズの世界におぼれた僕は、たちまちシリーズ全巻を読破、他のシリーズにも手をのばし、創元推理文庫にも手を出し、あきたらずにハヤカワ文庫SF や創元推理文庫SFマーク(現在の創元SF文庫)を読み出し、SFマガジンを定期購読するようになり……高校生になると創作を始め、同好の士を見つけるといてもたってもいられなくなってサークルを創り、同人誌を作り、古本屋をハシゴするようになり……まあその後は挫折もあったのだけど、やがて当たり前の会社員になってみて、思うことは、あの頃はよかったなあということ。
 後ろ向きの思いばかりでもないつもりです。夢も希望も鼻先で笑って強がらないと送れない青春期なんて、どうかしている。僕の人生に悔いはないし、すべてをふまえて今の自分があることに誇りもあります。だから、インターネットの世界を知り、個人が誰でも自由に自分を表現できるメディアを入手できるのだと知ったとき、最初に思ったのはあの頃を再現する試みをやってみたいということでした。
 まずはバローズ。余力があればハミルトンにも手を出そうかな? でもそれは、まだ先の話ですけれども。人生は長いですからね。じっくりと、取り組みさせていただきます。訪れてくれるみなさんには当分工事中のページばかりをみていただくことになり恐縮ではありますが、容赦ください。
 では、これからも「エドガー・ライス・バローズのSF冒険世界」をどうぞよろしく。

1996年10月13日
ジャスームの島国の小さな新居にて生まれたばかりのカーソリスを抱きながら
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 追記
 最近、メールをいただくことが増えたのですが、その多くが「似たような少年時代をおくりました」といった内容で、ああそうなんだなあと思います。ぼくは決して特殊な存在じゃなかった。そして、似たような思いを持つ多くの人々が、ぼくのつたない文章を読み、メッセージをくれる。これは、エール以外の何ものでもないと、ぼくは受けとめています。はやく、このHPを完成させ、またより充実したものに仕上げていくために、努力していきたいと思います。応援よろしくお願いします。

1996.11.15記


 追記2
 先日、書店めぐりをしてみました。バローズがはたしてあるのか? と、見て回ったのですが、小さな書店だとハヤカワ文庫SFは新刊しかなく、創元SF文庫に至っては1冊もないというところが少なくないのです。予想通りではあったのですが、ショックは隠せませんでした。金沢では最大規模の老舗の書店をのぞいてみて(郊外型の新興大型書店はだめです)、ようやく「類猿人ターザン」を1冊だけ、見つけました。東京創元社の目録も見つけましたが、主要なシリーズは掲載されてはいましたが、在庫希少本ということなので、店頭には置かない方針なのかもしれません。
 バローズを主力にしていた出版社の現状として、さみしいものはありますが、やむを得ないのでしょうか。しかし、アーサー・K・バーンズなんか、リバイバルされていたりするのを見かけると、ジェリー・カーライルよりはジョン・カーターのほうが売れるだろう、とか思ってしまいます。早川書房はエドモンド・ハミルトンはかなり復刻しているみたいで、「キャプテン・フューチャー」も5冊でていました。これは野田昌宏氏の影響かな? 氏は、現役の人気者ですからね。雑誌に連載コラムを持たない厚木淳氏との差があるのかな。まあ、コナンやノースウェスト・スミスも各1冊づつはあったから、出版社の良心として古典的作品の代表作は文庫版で残そうと言うことなのかもしれません。
 しかし、予想通りの事態に、寂しいものを感じつつ、帰宅したのですが、このような現状に背を向けて、HPづくりに精を出していても、いいのかと、考えさせられました。というわけで、出版者宛の抗議文を書こうと思います。みなさんも、どうか、協力ください。

1997.1.25記す


 追記3

 先日、東京創元社の小浜徹也氏よりメールが届きました。内容は、創元SF文庫は叢書名の変更であって規模の縮小ではないということ、そして著作権者への了承の確認および確認代行の申し出でした。
 前者については、読者の嗜好の変遷もあって絶版がでることは、私自身、やむを得ない側面があると思っているのですが、一般書店の文庫棚に占める東京創元社の、中でもSF文庫の割合が明らかに減っていること、叢書名の変更に伴うカバーの掛け替えは売れ行きの悪い在庫本の処分の手段として他の出版社でも過去におこなわれてきたという歴史的事実から類推(邪推)したものです。私の愛する作品群が軒並み姿を消したことに対する哀惜の念もこもっているのかもしれません。
 後者の著作権に関しては、私に非のあることであり、ファンが愛するがあまり無利無欲でおこなっていることだからという甘えから勝手に正当化していただけのことなので、ここは厚意に甘えて、武部未亡人、ならびに厚木淳先生への著作権侵害に関するお詫びと事後にはなりましたが了承をいただくための手助けをお願いすることにしました。他の作家、イラストレーターの方々にも同様のお願いをしなければならないため、東京創元社、並びに早川書房に対して協力の申し出をしようかと考えています。
 といったわけで、場合によってはHP全体の構成を見直す必要が生じることも考えられます。その際は、ご了承ください。ただし、私のERBに対する(そして武部氏や厚木氏らに対する)愛情は永遠であると自負しておりますので、どのような形ででも、それを表現し続ける覚悟です。

1997.2.20記す


 追記6

 きたる1998年には2本のターザン映画が公開予定らしい。昨年も新作TVシリーズが公開されているので、アメリカのメディアはちょっとしたターザン・ブームか? 考えてみればかつては世界で知らぬものはないとまでいわれたアメリカが世界に誇る大ヒーロー(バットマンなんか目じゃないぜ!)なわけで、当然の順番なのかもしれないが。ちなみに2本のうちの1本はディズニー・アニメらしい。本当かなあ。まあ、できれば映画が日本でも公開されて、絶版になっていた作品が復刊され、さらには未完の3作にも光が当たれば万々歳。そうはうまく問屋はおろさないか?

1997.04


追記7

 「勝手にリンクしました」というメールをいただきました。こちらとしては Link Free をうたっているわけで、かまわないというか、むしろうれしいことなわけです。で、よく見ると、その人も自分のHPを持っているらしい。これはリンクし返さねばと訪れてみると……もう、びっくり。日本で刊行されたSF叢書や雑誌の初版本、創刊号がカラーで紹介されているほか、アメリカのパルプ雑誌まで。しかもERBは別枠をとってあって、フランク・R・パウルの表紙はでてくる、アメリカのERBファンが出したファンジン(ファンが自費出版した同人誌)のERBダムまである……。コレクターなのだなあと感心しました。どうやって集めたのだろう。わたしのHPとはタイプが違うので、協調しあって大きくしていきたいものだと思いました。

1997.04


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