ターザン物語3

ターザンの怒り
The Beasts of Tarzan(1914)

Illustrated by Motoichiro Takebe

野上彰:訳/武部本一郎:画/野上彰:解説 実業之日本社/ターザン物語3 /1961.11.01初版/214頁

この絵は権利者である故武部本一郎夫人・武部鈴江さんの許諾により転載しています

story/あらすじ

この本のはじめに
 みなさん。ジャングルの王者、熱血児ターザンを、よくごぞんじですね。きっと映画やテレビでごらんになったことと思います。
 このターザン物語全六冊では、そのターザンのスリルと冒険にみちた活躍が、アフリカのジャングルを舞台にして、つぎからつぎへと展開されます。
 映画では見られなかった、類人猿に育てられた少年ターザンのおもしろいお話があとからあとから、息もつかせないほど、ぞくぞくとでてきます。
 いまからやく五十年まえ、アメリカの作家バーローズによってあらわされた、正義の味方ターザンの物語を、さあ読んでみましょう。
一九六一年 八月
訳者 野上 彰

chapters/目次

  1. ロコッフの陰謀
  2. ターザンねらわる
  3. キンケード号
  4. 類人猿アクート
  5. ターザンとシータ
  6. 酋長ムガンビ
  7. アクートとシータの活躍
  8. バゴンダの悪だくみ
  9. 死のおどり
  10. 風まかせの男
  11. ぬか喜び
  12. 赤ん坊の病気
  13. あわれ、赤ん坊は
  14. バゴンダ族との戦い
  15. スベン・アンデルセンの死
  16. 酋長ムガン・ワザム
  17. 悲しき墓
  18. ジェーンの脱走
  19. きみょうな仲間
  20. ウガンビ川の主
  21. 勇敢なジェーン
  22. わにの巣
  23. カヌーの中の女
  24. ロコッフの最期
  25. キンケード号の爆発
  26. 忠実な部下たち
  27. コーリイ号
  28. カイシャンのたくらみ
  29. 五人の悪党
  30. ターザンのなげき
  31. 動物たちよ さようなら

history/初出

The Beasts of Tarzan,May.16-Jun.14,1914,All-story magazine
The Beasts of Tarzan,1916,A.C.McClurg

comment/コメント

 実業之日本社による The Beasts of Tarzan の翻訳、という以前に、刊行年を見て欲しい。1961年、つまり昭和36年。創元推理文庫版『火星のプリンセス』以前だ。そして、表紙のイラストに目を転じてみよう。これは……武部本一郎? そう! バローズと、武部本一郎の出会いは『火星のプリンセス』ではなかったのだ!
とある古本屋さんから通販で買ったのだけれど……その情報を提供していただいた古参SF/バローズ・ファンの方(ご本人の希望により、あえて名前は伏せさせていただきます)から教えていただいた内容をご紹介させていただきます。

 現物は見たこともないのですが、「宇宙塵」117号(昭和42年11月 20日発行)に掲載されている島本光昭「バローズ翻訳史」によると――
「昭和三十六年になるとようやく全巻を出版したターザンシリーズが現われた。実業之日本社版、野上彰訳「ターザン物語」全六巻がそれである。この野上という人は、よほどターザンが気にいったと見える。値段が高かった為か余り売れなかったらしいが、それでも小学校の図書館などで広く読まれた。」
 と書かれています。 「ターザンの怒り」は、おそらくこのシリーズの1冊でしょう。

 訳者のあとがきによれば、ほぼ原作の刊行どおり紹介されているようで、第3巻は本家の第3巻だし、第4巻も本家の息子活躍番が刊行される予定として紹介されている。腰を据えて刊行をしようという姿勢がうかがえていいのだけれど、願わくば第7〜8巻くらいまでは出して欲しかった。
 とまれ、武部氏が表紙と挿絵に絵筆を振るっていて、なかなかであった。

 ちなみに表紙の剣道少年と、右下の赤い文字らしきものは、シールを貼った跡で、この本を手にした当時の子供の仕業と思われる。うーん、惜しい。

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