ジョン・カーターのライヴァルたち

ジューマ・シリーズ
ジューマの神々〈バルスームふたたび〉
The Gods of Xuma ; Barsoom Revisited
ジューマの元帥たち
Warlords of Xuma

デヴィッド・J・レイク:著/厚木淳:訳/絵:星恵美子/解説:厚木淳 東京創元社/創元推理文庫
デヴィッド・J・レイク:著/厚木淳:訳/絵:星恵美子/解説:厚木淳 東京創元社/創元推理文庫


history/初出

  1. 『ジューマの神々――バルスーム再び』
  2. 『ジューマの元帥たち』

comment/コメント

 厚木淳訳でキーワードは「バルスーム」となると、避けて通るわけにはいかない。率直に言って、すぐれたSFなんかでは全くないのだけれど、主人公達がERBファンで、一見バルスームそっくりの惑星にたどりついて興奮する冒頭部には思わず共感したりして、これはもう贋作やパロディというよりはファン・フィクションなのだなとわかってしまう。
 異星人が地球人そっくりだったり(外観も文化風習なども!)、語学の天才があっさり言葉をマスターしたり、現地の美女(女王!)と主人公ができちゃったり(ただし現地の男と地球人の女性はできることがない……性器の構造が違うので。って、要は地球人の男のナニは小さいってことか?)。などなど。ファンならば楽しめる仕掛けがいっぱい。主人公のキャラクターがいわゆるヒーローとは対極をなすというところがまあせめてもの抵抗だろうか。ただ、女性が繁殖のための存在のように描かれていて、それもどうやら批判的な書き方でないとなるとあれあれ、これで近現代の小説と言っていいのかな、と思える。
 いずれにせよ、読み継がれるべき作品ではない、何かの勘違いで翻訳されてしまった愚作なのだけどもどこかにくめないところがあって、まあ気に入ってしまったというところだ。原因は、作者がバローズ・ファンだという点にあることを否定するつもりはない。

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