Illustrated by Motoichiro Takebe
厚木淳：訳／武部本一郎：画／厚木淳：解説 東京創元社／創元推理文庫601-17／1971.08.27初版／435頁
story/あらすじ
南太平洋にある絶海の孤島キャスパック、そこは百万年前の恐竜時代が悪夢のようにまざまざと再現された恐怖の土地であった。その島に偶然上陸したアメリカ青年ボウエン、さらには彼の救援に駆けつけたビリングズたちは文明社会から隔離されたまま空飛ぶ怪獣や有翼人間と戦いつつ故国への脱出をはからなければならなかった。しかもキャスパックには不可解で無気味な進化の法則が支配しているらしく、その謎をとくことにも彼らの脱出の成否がかかっていた。E・R・バローズが秘境世界に取材した快心のロストワールド３部作を１巻にまとめて読者に贈る。
chapters/もくじ
第一部 ボウエン・タイラーの手記――時間に忘れられた国――1.〜10.(章題なし)第二部 トーマス・ビリングズの冒険――時間に忘れられた人々――1.〜7.(章題なし)第三部 ブラッドリーの冒険――時間の深淵より――1.〜5.(章題なし)
characters/登場人物
| 「第一部 ボウエン・タイラーの手記」 | |
| ボウエン・タイラー | アメリカ人。造船技術者 |
| リス・ラ・ルー | フランスの美女 |
| シェーンフォルツ | ドイツのＵボートの艦長 |
| ブラッドリー | 英国の引き船の一等航海士 |
| オルスン | 同機関士 |
| ウィルスン | 同水夫 |
| ベンスン | |
| ホワイトリー | |
| ティペット | |
| 「第二部 トーマス・ビリングズの冒険」 | |
| トーマス（トム）・ビリングズ | アメリカ人。ボウエンの親友 |
| アジョール | ガルー族の酋長の娘 |
| デュ・シーン | ガルー族の戦士。酋長の座とアジョールを狙う男 |
| ト・マル | トムに協力するバンド・ルー族の戦士 |
| ソ・アル | ト・マルの女 |
| チャル・アツ | トムに協力するクロ・ルー族の戦士 |
| アル・タン | デュ・シーンと共謀するクロ・ルー族の酋長 |
| アーム | 捜索隊が捕虜にしたボ・ルー族（棒人） |
| 「第三部 ブラッドリーの冒険」 | |
| ブラッドリー | 英国人。引き船の一等航海士 |
| コ・タン | ガルー族の美女 |
| フォッシュ・バル・ソー | ブラッドリーを誘拐したウィールー（有翼人間） |
| シンクレア | 英国の引き船の水夫 |
| ブラディ | |
| ジェイムズ | |
| ティペット | |
history/初出
The Land That Time Forget,1924,McClurg
comment/コメント
ペルシダーで原始時代のロマンスに目覚めたバローズが、ＳＦ的にも優れた進化論的アイディアを盛り込んで（Ａ・Ｃ・ドイル『失われた世界』に触発もされて）書き上げたＳＦの佳作。1927年、ＳＦの父とでもいうべきヒューゴー・ガーンズバック（最近、『ラルフ124C41+』が復刻されましたね）が世界初の本格的ＳＦ専門雑誌「アメージング・ストーリーズ」に再録したことでも、ＳＦとしてのレベルの高さがあらわれているといえるだろう。バローズ初期の意欲作のひとつ。
創元版の表紙はまずこの武部版、ついで『恐竜の島』の邦題で映画化されたさいのポスター（正続あるらしい。観たことはないが、マイクル・ムアコックが脚本に参加しているらしい）、後年のデザイナーが作った翼龍版（センスはいいかもしれないが、絵は最低）とある。翼龍版は先日書店にあるのを発見したが、やはり武部版が一番だ。邦訳は早川書房が早かったので、他のコラムでこのシリーズを扱う際はハヤカワ版のタイトルであることを了解していただきたい。