月シリーズ1 MOON series 1

月の地底王国
The Moon Maid(1923)

Illustrated by Tohru Kanamori

関口幸男:訳/金森達:画/森優:解説 早川書房/ハヤカワ文庫SF4/1970.08.31 初版/289頁


story/あらすじ

 人類の希望を一身に担った火星行き宇宙船がやむなく不時着した月の地下は、原色の花咲き乱れる月人の国だった不運の船長、熱血漢ジュリアン5世はそこでとらわれの美女ナー・エエ・ラーを凶悪な獣人どもの手中から救い出し、その故国レイスめざして言語に絶した長い危難の旅に出発する。だが、そのころレイスでは内に皇帝サグロス暗殺の計画、外に蛮人侵略の脅威という、まさに内憂外患の危機が刻一刻迫りつつあった! バロウズSFの最高峰!

chapters/もくじ

  1. 宇宙での冒険
  2. 月の秘密
  3. けものか人間か
  4. 囚われの身となって
  5. あらしを脱して
  6. 月世界の女
  7. 脱出のチャンス
  8. トル・ホと一騎討ち
  9. カルカル人に襲わる
  10. カルカルの都市
  11. 太公コ・ター
  12. 危機つのる
  13. 生か死か!
  14. バルスーム号だ!

characters/登場人物

ジュリアン五世 バルスーム号の船長を勤める国際治安航空隊の熱血漢
オルチス 底意地の悪い、ジュリアンのライバル。バルスーム号の搭乗員
ナー・エエ・ラー 月の文明都市レイスの皇帝サグロスの聡明な愛娘
コ・ター 皇帝の座を目指すレイスの太公
ガ・ヴァ・ゴ 勇猛な蛮人の族長
ウェスト バルスーム号の搭乗員
ジェイ
ノートン

history/初出

  1. The Moon Maid,May 5 to Jun.2,1923,Argosy All Story Weekly Magazine
The Moon Maid,1926,McClurg

comment/コメント

 実は月シリーズは創元版しか読んでいないのだが……第1巻(第1部というべきか)の感想としては、あまり印象にないというところ? だろうか。強いていうならヒロインだけ助けてその母なる世界を見捨ててさっさと脱出ししてしまうラストがちょっと異色か。あと、火星シリーズと地続きの未来を舞台にしていて、なんとジョン・カーターまで登場してしまうというサービス感覚。なぜそこまで? ということには、実際裏があるとわたしはふんでいる。
 さて、月シリーズといえばやはり第2部。これは、シリーズものとしては珍しい(ふつう、真ん中の作品は中だるみになることが多い)ことだが、書かれた順序でいけば第2部が最初と聞けば納得。この第1部は導入部な訳だ。というわけで、〈火星シリーズ〉や〈金星シリーズ〉の焼き直しのような、ERBファンにとってはおなじみのストーリイが楽しめることになる。ここで油断させておいて……というわけだ。単独の作品としてはチープな印象だが、そう考えればこの第1部も、期待を持って読めるのではないかな?

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