ターザン・シリーズ6 TARZAN series 6

ターザンの密林物語
Jungle Tales of Tarzan(1916-1917)

Illustrated by Motoichiro Takebe

高橋豊:訳/武部本一郎:画/高橋豊:解説 早川書房/ハヤカワ文庫特別版SF106 /1974.12.31初版/280頁

この絵は権利者である故武部本一郎夫人・武部鈴江さんの許諾により転載しています

story/あらすじ

 イギリスの貴族グレイストーク卿夫妻が、暗黒のアフリカ大陸のとある浜辺の丸太小屋で、非業な死を遂げて以来、獰猛な類人猿に拾われ、ジャングルの厳しい掟のもとに、たくましく成長した少年ターザン! だが、出生の秘密を知らぬ野性的な、冷徹な心にもいつしか、愛と孤独の悲哀がよぎるのだった……。いまや、父の形見の狩猟ナイフを手に、育ての親である類人猿カラを殺した、ムボンガ部族に復讐を誓い、胸を張り、月をふり仰ぎ、巨大類人猿の挑戦の雄叫びをあげる野生児ターザン!

chapters/目次


characters/登場人物

ターザン ジャングルの王者。英国貴族グレイストーク卿。
ティーカ 類人猿の雌
タウグ 類人猿。ターザンの幼友達
ガザン ティーカの子
ムンガ 類人猿の老婆
ムボンガ ムボンガ族の酋長
ラバ・ケガ ムボンガ族のまじない師
モマヤ ムボンガ族の女
ティボ モマヤの子
ブカワイ 病身の老まじない師

history/初出

  1. The New Stories of Tarzan - Tarzan's First Love,Sep.1916,Blue Book Magazine
  2. The New Stories of Tarzan - The Capture of Tarzan,Oct.1916,Blue Book Magazine
  3. The New Stories of Tarzan - The Fight for the Balu,Nov.1916,Blue Book Magazine
  4. The New Stories of Tarzan - The God of Tarzan,Dec.1916,Blue Book Magazine
  5. The New Stories of Tarzan - Tarzan and the Black Boy,Jan.1917,Blue Book Magazine
  6. The New Stories of Tarzan - The Witch Doctor Seeks Vengeance,Mar.1917,Blue Book Magazine
  7. The New Stories of Tarzan - The End of Bukawai,Mar.1917,Blue Book Magazine
  8. The New Stories of Tarzan - The Lion,Apr.1919,Blue Book Magazine
  9. The New Stories of Tarzan - The Nightmare,May.1917,Blue Book Magazine
  10. The New Stories of Tarzan - The Battle for Teeka,Jun.1917,Blue Book Magazine
  11. The New Stories of Tarzan - A Jungle Joke,Jul.1917,Blue Book Magazine
  12. The New Stories of Tarzan - Tarzan Rescues the Moon,Aug.1917,Blue Book Magazine
Jungle Tales of Tarzan,1919,McClurg

comment/コメント

 ターザンの少年時代のエピソードをつづった短編集。12回にわたって分載された(詳しくはhistoryの項参照)。長編作家バローズの意外な才能をかいま見ることができて、面白い作品集だ。
 実際、かなりの出来で、初恋や神の問題、哲学に悩む少年の成長物語として、興味深く読むことができた。こういう才能を見ると、少年ものを書かせてみたかったという気がしてくる。もともとバローズの作品は少年期に読むのがいいのではないかと考えているが、純粋に子供向けであっても、よいかもしれない、と感じられてくる。また、短編も書けるという点でも、バローズの才能の豊かさが感じられる。
 もっともこの点は評価が分かれるようで、ターザンに軸足を置いたファンの中には本作の評価を低く見る人もいるようだ(特に本国のファン)。私などは人間ターザンの成長物語が好きなのでつい評価してしまうが、ヒーローとしてのターザンのファンから見れば肩透かしのような巻なのかもしれない。バローズはこうした実験作を時々ものにするが、そのつど軌道修正して元に戻っていくから、やはり大衆の要求に敏感な作家だったということもいえるのかもしれない。
 ちなみにわたしの所有している同書は落丁で、解説以降のページがない。残念に思っていたら、常連の宮崎さんがなんとビットマップにしたうえ、OCRにかけて送ってくれた。というわけでこれでハヤカワ文庫SF版のバローズの全解説収録が果たせた。感謝多謝。

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