ターザン・シリーズ8 TARZAN series 8

恐怖王ターザン
Tarzan the Terrible(1921)

Illustrated by Motoichiro Takebe

高橋豊：訳／武部本一郎：画／森優：解説　早川書房／ハヤカワ文庫特別版SF108 ／1972.11.30初版／336頁

この絵は権利者である故武部本一郎夫人・武部鈴江さんの許諾により転載しています

story/あらすじ

　ジェーンは生きている！　ドイツ軍に虐殺されたはずの妻が土人部落に監禁されていることを知ったターザンは、勇躍、救出に向かうが、彼女の姿はすでになく、あてのない捜索の旅がはじまった。幾重にも連なる山々を越え、広大な沼沢地の奥深く分け入った彼は、やがて緑なす峡谷−恐竜、怪獣が跋扈し、有尾人の棲息する秘境パル・ウル・ドンへと足を踏み入れていく。ターザンの行く手にはいかなる危機が、そしてジェーンは何処に……？　恐怖と美、死と平和の共存する秘められた大自然に、いま再びこだまするターザンの雄叫び！　前作「野獣王ターザン」に引き続き展開されるターザンの死闘！

chapters／目次

  1. ピテカントロープス
  2. 生死をともに！
  3. パン・アト・リー
  4. ターザン・ジャド・グル
  5. グリフの峡谷で
  6. トル・オ・ドン
  7. 機転
  8. ア・ルル
  9. 血に染まった祭壇
  10. 禁断の園
  11. 死の宣告
  12. 異人
  13. 仮装
  14. グリフのやしろ
  15. 王は死んだ
  16. 秘密の道
  17. 孤独な自由
  18. ライオンの落とし穴
  19. ジャングルの女神
  20. 忍び寄る影
  21. 狂気
  22. 密使
  23. 生け捕りになる
  24. 死の使者
  25. 帰郷

characters/登場人物

ターザン ジャングルの王者。英国貴族グレイストーク卿
ジェーン ターザンの妻
オム・アト ワズ・ドン人の若者
パン・アト・リー オム・アトの恋人
タ・デン ホ・ドン人の若者
コ・タン ホ・ドン人の王
オ・ロー・ア コ・タンの娘
ル・ドン ア・ルルの司祭長
パン・サト ア・ルルの司祭
ジャ・ドン ホ・ドン人の部族の酋長
モ・サル
ブ・ロト モ・サルの息子
エリッヒ・オーベルガッツ中尉 ドイツ軍将校
ジャック ターザンの息子

history／初出

Tarzan the Terrible,Feb.12-Mar27,1921,All-Story magazine
Tarzan the Terrible,1921,McClurg

comment/コメント

　ターザン・シリーズの、盛り上がり的には頂点を形作った１冊。パル・ウル・ドンはその後の秘境もののの先鞭をつける世界だ。前作との連作の構成で、種明かしをするとジェーンも生き返るわけだが、その存在感の薄さが浮き彫りになってしまい、このあと、あまり登場しなくなる。この時代の（特にパルプの）ヒロインというものは自分からは何もせず、ただ誘拐されて救い出されるだけの、ヒーローのトロフィーでしかないのが典型だったわけで、繰り返し登場して場を持たせるだけの個性がないのは、当然か。バローズに女性が描けないわけではなく、オパルのラーとか、ペルシダーのゾラムの赤い花やオー・アアなんか、魅力的なヒロインに仕上がっているので、一読あれ。

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