火星シリーズ(MARS/BARSOOM series)

Illustrated by Motoichiro Takebe
Mars series volume 1:"A Princess of Mars"

この本の表紙絵は権利者である故武部本一郎夫人・武部鈴江さんの許諾により転載しています

series list/シリーズ・リスト

  1. Under the Moons of Mars,1912
    "A Princess of Mars",1917
    『火星のプリンセス』創元推理文庫601-1/小西宏:訳/武部本一郎:画,1965
    『火星の勇士』学研 中2コース付録/内田庶:訳/岡野謙二:画,Oct.1966
    『火星のジョン・カーター』岩崎書店 SF世界の名作8/亀山龍樹:訳/鈴木康行・沢田重隆:画,Dec.1966
    『火星のプリンセス』角川文庫 赤-767/小笠原豊樹:訳/遠藤拓也:画,1967
    『火星のプリンセス』講談社/亀山龍樹:訳/司修:画,May.1967
    『火星のプリンセス』偕成社 SF(科学小説)名作シリーズ15/野田開作:訳/武部本一郎:画,Jun.1968
    『火星の王女』集英社 マーガレット文庫世界の名作30
    『火星の月のもとで』早川書房 世界SF全集31 世界のSF(短編集)古典篇/関口幸夫:訳
    『火星のプリンセス』秋元書房ヤングシリーズ2/谷元次郎:訳/小松崎茂:画,1968
    『火星のプリンセス』集英社 ジュニア版世界のSF13/内田庶:訳/金森達・岩淵慶造:画,1970
    『火星の王女』岩崎書店 SFこども図書館8/亀山龍樹:訳/沢田重隆:画,Feb1976
    『火星のプリンセス』秋元文庫E61/谷元次郎:訳/高井吉一・小松崎茂:画,Mar.1978
    『火星のプリンセス』創元推理文庫601-1/厚木淳:訳/武部本一郎:画
    『火星の王女』ぎょうせい少年少女世界名作全集20/瀬川昌男:訳/伊藤展安:画
    『合本・火星シリーズ1 火星のプリンセス』創元SF文庫/厚木淳:訳/武部本一郎:画.1999(2,3との合本)
    『火星のプリンセス』岩崎書店 冒険ファンタジー名作選2/亀山龍樹:訳/山本貴嗣:画,Oct.2003
    『火星のプリンセス』グーテンベルク21/小笠原豊樹:訳,2004
    『[新版]火星のプリンセス』創元SF文庫/厚木淳:訳/岩郷重力:表紙,Mar.2012
    『火星のプリンセス』小学館文庫/小笠原豊樹:訳/三浦均:画,Mar.2012
  2. The Gods of Mars,1913
    "The Gods of Mars",1918
    秘密小説火星の王子』中學世界/大正十三年三月号
    『火星の女神イサス』創元推理文庫601-2/小西宏:訳/武部本一郎:画,1965
    『火星の女神イサス』創元推理文庫601-2/厚木淳:訳/武部本一郎:画
    『火星の女神イサス』角川書店/角川文庫 赤706/小笠原豊樹:訳/遠藤拓也:画,1967
    『火星の空中艦隊』講談社/塩谷太郎:訳/司修:画,May.1967
    『合本・火星シリーズ1 火星のプリンセス』創元SF文庫/厚木淳:訳/武部本一郎:画,1999(1,3との合本)
    『火星の女神イサス』グーテンベルク21/小笠原豊樹:訳,2004
    『火星の女神イサス』小学館文庫/小笠原豊樹:訳/三浦均:画,Apr.2012
  3. The Warlord of Mars,1913-1914
    "The Warlord of Mars",1919
    『火星の大元帥カーター』創元推理文庫601-3/小西宏:訳/武部本一郎:画,1966
    『火星の大将軍』講談社/矢野徹:訳/司修:画,1967
    『火星の大元帥カーター』角川文庫/小笠原豊樹:訳/遠藤拓也:画,1968
    『火星の大元帥カーター』創元推理文庫601-3/厚木淳:訳/武部本一郎:画
    『合本・火星シリーズ1 火星のプリンセス』創元SF文庫/厚木淳:訳/武部本一郎:画,1999(1,2との合本)
    『火星の大元帥カーター』グーテンベルク21/小笠原豊樹:訳,2004
    『火星の大元帥カーター』小学館文庫/小笠原豊樹:訳/三浦均:画,May.2012
  4. Thuvia,Maid of Mars,1916
    "Thuvia,Maid of Mars",1920
    『火星の幻兵団』創元推理文庫601-4/小西宏:訳/武部本一郎:画,1966
    『火星のまぼろし兵団』講談社,1967/福島正実:訳/司修:画,1967
    『火星の幻兵団』創元推理文庫601-4/厚木淳:訳/武部本一郎:画.1971
    『火星のまぼろし兵団』鶴書房SFベストセラーズ/福島正実:訳/柳柊二:画,1975
    『合本・火星シリーズ2 火星の幻兵団』創元SF文庫SFハ-3-40/厚木淳:訳/武部本一郎:画,1999(1,2との合本)
  5. The Chessmen of Mars,1922
    "The Chessmen of Mars",1922
    『火星のチェス人間』創元推理文庫601-5/小西宏:訳/武部本一郎:画,1966
    『火星のチェス人間』創元推理文庫601-5/厚木淳:訳/武部本一郎:画
    『火星のくも人間』講談社/都筑道夫:訳/司修:画,1967
    『合本・火星シリーズ2 火星の幻兵団』創元SF文庫SFハ-3-40/厚木淳:訳/武部本一郎:画,1999(1,2との合本)
  6. The Master Mind of Mars,1927
    "The Master Mind of Mars",1928
    『火星の交換頭脳』創元推理文庫601-6/小西宏:訳/武部本一郎:画
    『火星の交換頭脳』創元推理文庫601-6/厚木淳:訳/武部本一郎:画
    『火星の頭脳交換』講談社/中尾明:訳/司修:画,1967
    『合本版・火星シリーズ第2集 火星の幻兵団』創元SF文庫SFハ-3-40/厚木淳:訳/武部本一郎:画,1999(4.5との合本)
  7. A Fighting Man of Mars,1930
    "A Fighting Man of Mars",1931
    『火星の秘密兵器』創元推理文庫601-7/厚木淳:訳/武部本一郎:画
    『火星の秘密兵器』講談社/北川幸比古:訳/司修:画,1967
    『合本版・火星シリーズ第3集 火星の秘密兵器』創元SF文庫SFハ-3-41/厚木淳:訳/武部本一郎:画,2001(8,9との合本)
  8. Swords of Mars,1934-1935
    "Swords of Mars",1936
    『火星の透明人間』創元推理文庫601-8/厚木淳:訳/武部本一郎:画
    『火星の秘密暗殺団』講談社/野田昌宏:訳/司修:画,1967
    『合本版・火星シリーズ第3集 火星の秘密兵器』創元SF文庫SFハ-3-41/厚木淳:訳/武部本一郎:画,2001(8,9との合本)
  9. Synthetic Men of Mars,1939/1940
    "Synthetic Men of Mars",1939/1940
    『火星の合成人間』創元推理文庫601-9/厚木淳:訳/武部本一郎:画
    『火星の合成人間』講談社,1967/南山宏:訳/司修:画
    『火星の合成人間』鶴書房SFベストセラーズ/南山宏:訳/武部本一郎:画,1975
    『合本版・火星シリーズ第3集 火星の秘密兵器』創元SF文庫SFハ-3-41/厚木淳:訳/武部本一郎:画,2001(8,9との合本)
  10. John Carter and the Giant of Mars,1941
    「火星の超巨人」SFマガジン1966年8月臨時増刊号/川口正吉:訳,1966
    「火星の巨人ジョーグ」/厚木淳:訳(東京創元社版『火星の巨人ジョーグ』に収録)
    『火星の合成人間』偕成社 SF(科学小説)名作シリーズ11/内田庶:訳/池田竜雄・武部本一郎・伊勢田邦彦:画,1968
    "John Carter of Mars",1964(12と合本)
    『火星の巨人ジョーグ』創元推理文庫601-11/厚木淳:訳/武部本一郎:画(12との合本)
    『合本版・火星シリーズ第4集 火星の古代帝国』創元SF文庫SFハ-3-42/厚木淳:訳/武部本一郎:画,2002(11,12,『モンスター13号』との合本)
  11. The City of Mummies,Mar.1941
    Black Pirates of Barsoom,Jun.1941
    「火星の黒色人」(集英社版『火星のプリンセス』に収録)
    Yellow Men of Mars,Aug.1941
    Invisible Men of Mars,Oct.1941
    "Llana of Gathol",1948
    『火星の古代帝国』創元推理文庫601-10/厚木淳:訳/武部本一郎:画
    『火星の地底王国』講談社/内田庶:訳/司修:画,1967
    『合本版・火星シリーズ第4集 火星の古代帝国』創元SF文庫SFハ-3-42/厚木淳:訳/武部本一郎:画,2002(10,12,『モンスター13号』との合本)
  12. Skeleton Men of Jupiter,1943
    「木星の骸骨人間」/厚木淳:訳(東京創元社版『火星の巨人ジョーグ』に収録)
    "John Carter of Mars",1964(10と合本)
    『火星の巨人ジョーグ』創元推理文庫601-11/厚木淳:訳/武部本一郎:画(10との合本)
    『合本版・火星シリーズ第4集 火星の古代帝国』創元SF文庫SFハ-3-42/厚木淳:訳/武部本一郎:画,2002(10,11,『モンスター13号』との合本)

comment/コメント

『火星のプリンセス』こそ、日本におけるバローズの評価を決定づけた作品。ターザン作家ではなくSF作家として世に出した東京創元社と厚木淳氏に(そして小西宏氏に)感謝したい。と書くとターザン・ファンに怒られそうだけど、ターザン作家として浸透してしまっていたならばもっと早く絶版になっていただろうし、他の作品がどれほど紹介されたか怪しいものだと思う。野田昌宏氏による紹介も以前にあったはずだが、過去の人、歴史上の人物としての評価だったように思うし、(全巻刊行という)東京創元社の英断は貴重なエピックだった。この〈火星シリーズ〉の出版とヒットにより、20世紀初頭の時代遅れの作家と見なされていたバローズは実はまだまだ読者を引きつけ、魅させるだけの力をもった現役の作家であることを業界に認識させることになった。そして、その認識は彼に続くスペース・オペラ作家たちにも広がることになったのだった……。

 南軍大尉ジョン・カーターはインディアンに追われ、アリゾナの山中で気を失う。目覚めたとき、彼は火星にいた。凶暴な緑色人、美しい赤色人、そして多くの不可思議な生物がいる火星(バルスーム)で、カーターは低重力をいかして大活躍、やがて赤色人の王国ヘリウムのプリンセス、デジャー・ソリスと恋に落ち、結ばれ、火星の大元帥を名乗るまでになる。

 幻想の世界での波瀾万丈の冒険物語で、SFと呼んでよいのか気が引ける部分もあるが(特に第1作の導入部などは純粋に異世界冒険ファンタジーになっている)、後半の物語群に登場する超科学の数々はバローズが開き直って(?)この異世界でSF 的なアイディアを自由に展開していて、その発想の豊かさと先駆性に目を開かされる思いだ。SFの先駆として(実はH.G.ウェルズと同時代の作家だ!)重要な役割を果たしていることは間違いない。
 本国では単行本の刊行としては〈ターザン・シリーズ〉の方が早かったが、現実には〈火星シリーズ〉こそ処女作。この日本語版は当時かなり売れたらしく、創元推理文庫(現在は創元SF文庫と改称)版以降、いろいろな版がでている。『火星のプリンセス』などは、いったい何社から出たかわからないくらい。軽く10社に上るのではないか。現在、これほどの熱狂的支持を受けるSF作品があるだろうか。すさまじいことである。
 創元推理文庫版では6巻までは小西宏訳と厚木淳訳が併記されているが、当初小西訳だったものを、バローズに憑かれた男(!?)厚木淳氏が全巻を翻訳しなおしたことによる。現在手にはいりやすいのはこの厚木淳訳のものと思う。微妙に章題や訳語は違うが、大枠において差はない(当然だけど)。
 講談社版は当時本国でも最新刊だった11巻を除く全巻を刊行しているが、全巻訳者を変えて短期間に集中して刊行する、というシステムで、一人の訳者で数カ月おきに刊行していた東京創元社を抜いて後半の巻では刊行が先になるという珍現象を生じさせている。大出版社がここまであわてるほどの売れ行きだったということなのだろうか。
 鶴書房版は4巻と9巻という中途半端な巻を出しているが、いずれもSFマガジンの初期の編集長が2代にわたって翻訳したということで注目できる。講談社版も同じ訳者だから、再販なのかもしれない。でも、彼らは実は不本意だったのではないかな? 初期のSFマガジン/早川書房が目指したのはもっと後の時代の本格SFの普及だったはずだから。
 角川文庫は諸3巻をすべて刊行しているが、金星シリーズも2冊だしている。

 『火星の巨人ジョーグ』は本国ではバローズの死後、1964年(ぼくの生まれた年だ!)にバローズ・リバイバル・ブームの一環として単行本化されているが、執筆は第2次世界大戦が始まった頃のこと。2中編を収めた中編集になっていて、真贋論争もあったといういわく付き。そのうちの「巨人ジョーグ」はルポフによれば息子のハーバート・バローズの作でERBは加筆しただけという。「骸骨人間」は舞台を木星に移していて、こちらにも真贋を疑う意見はあったようだが、これはまぎれもなくERBの作であるというのが現在の一致した見方である。

 なお、〈火星シリーズ〉は一般的には全11巻であり、単行本の巻数という意味ではそのとおりなのだが、上記リストは私の個人的・勝手な判断で、『火星の巨人ジョーグ』は連続性のない2作品の合本として、発表順にシリーズ番号をわけた。なお、『火星の古代帝国』も4作の中編がバラバラのタイトルで発表されているが、これは内容的に連続性があり、1冊にまとめる構想が最初からあったと判断して、シリーズ番号は1つにまとめてある。間違えることはないと思うが、追記する。

 〈火星シリーズ〉の特徴を一言でいうならば、バローズの処女作に連なるシリーズと言うこともあるかもしれないが、幻想性は飛び抜けてたかいことがあげられるだろう。SFとファンタジーの中間あたりといった感じか。どちらかといえば、幻想文学の系統だろうと思う。ただ、歴史的には後世のSFに与えた影響が大きく、その余波でERB自身もSFのストリームに巻き込まれていくことになる。後半の巻にその状況は見て取れる。現実には、後世のヒロイック・ファンタジーに与えた影響も少なくないと思うのだが、現実との関わりを断ち切れなかったところがファンタジーの枠からはみ出る原因ではないかと思われる。なんと言っても、ジョン・カーターはERBの大叔父だというのだから……。

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